【 Vol.7】熱傷について         形成外科医 藤巻史子 
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●熱傷について
以下の3つの観点からご説明します。
(1) 熱傷=やけど の種類
(2) 熱傷の重症度
(3) 熱傷の分類
(1) 熱傷=やけど の種類
 
【熱傷】
一般的なやけど。子供や高齢者では熱湯や風呂での受傷が多い。
 
【 火傷】
火事など火炎によるやけど。
 
【気道熱傷】
高温の気体、水蒸気などを吸い込んだ際に、気道に生じるやけどで、はじめは喉の痛み等を感じるだけであった者が、数十分後には焼けただれた気管粘膜の腫れで、気道閉塞を起こし、窒息死することがある。大したことがないと思っても、鼻毛が焦げていたり、鼻腔内にススの付着を認める、喉に痛みを感じる場合は、医師に診せること!
 
【低温熱傷】
こたつやホッとカーペット、カイロ、湯たんぽなどによるやけどで、低温故に油断してしまい、気がつかないうちに、子供や高齢者が受傷していることが多い。低温でも、局所的に長時間熱が加えられることによって、思っている以上に、やけどの進達度は深くなることが多い。受傷後に冷却しても意味が無い!軽く考えずに、すぐに医者に診せること!予防としては、カイロは肌に直接当たらない様にするとか、湯たんぽも直接足に触れない所に置く、もしくは就寝前には除去すること。こたつやカーペットの温度設定を低くする、寝る前にはスイッチを切るようにすること。
 
【化学熱傷】
酸・アルカリ性の薬剤や重金属、毒ガスによって生じる。特にアルカリ性は時間をかけて、より深部に広がる場合が多いので油断せず、注意が必要!薬品がかかったと思ったら、とにかくまず、流水でよく洗浄することが大切!余裕があればその後中和することが理想。
 
【複合熱傷】
爆発やプレス機などによるやけどは、火炎と爆風によって生じる高温でのやけどに爆発物や爆風による打撲・骨折や異物の刺傷、一酸化炭素中毒、高温と圧挫傷など、複数の要因にが合併しているため、より重症化しやすい。
 
【電撃症】
電流による障害+ジュール熱による障害と放電による障害電流による障害は、電気の入り口が小さくても、電気が流れた所全体に広がるため、時間が経ってからも障害範囲が予想以上に広がっていることが多く、注意を要する。心停止を生じることもある。

(2) 熱傷の重症度

やけどの重症度は、熱による障害の進達度(深さ)と受傷面積によって決まります。
この2要因がはっきりし始めるのは、受傷後4〜5日してから。
つまり、やけどの予後は、受傷直後から4〜5日後までの間に、どれだけ熱障害の進達を食い止められるかにかかっています。受傷直後に、的確な治療がなされなかった場合、やけどは必要以上に深く達し、傷跡を残すことになります。
やけどの進達度については、次の項にて詳細な説明をいたします。

 
【熱による障害の進達度(深さ)重症度判定】
 熱傷指数BI(burn index) 
    =2度熱傷面積(%)/2 + 3度熱傷面積(%)
      (10以上は重症と考えます。)

 熱傷予後指数PBI(prognostic burn index)
    = BI + 年齢
      (80以上は重症と考えます。100以上は予後不良。120以上は致命的。)
【熱による障害の受傷面積/重症度判定】

受傷面積における、判りやすくて簡単に重症度を把握できる一つの目安としては、手のひらの面積が上げられます。
(9の法則=手のひら一枚分が1%に相当し全身の合計を100とする)
やけどの深さに加えて、受傷面積が手のひら何枚分に相当するかがわかれば、大体の重症度の目安となります。一般的に、2度熱傷面積が15%以上もしくは3度熱傷2%以上では、入院加療が必要です。

更に2度熱傷面積が30%以上もしくは3度熱傷10%以上では、熱傷専門病院での入院加療が必要となります。気道熱傷や複合熱傷時も熱傷専門病院の受診が望まれます。ただし、同じやけどの面積と深さでも、子供や高齢者ではより重症化しやすく、面積や進達度が同じでも、顔面や陰部のやけども重症化の要因となります。また、四肢〜指などでは血行が障害されやすく、指を切断せざる得なくなったり、指が動かなくなったり、機能障害に陥りやすく、やはり重症化する特徴があります。

(3) 熱傷の分類
 
● 1度熱傷=(EB=epidermal burn)
原因: 熱湯・日焼けなど
症状: 皮膚が赤くなり、熱感とともにヒリヒリと痛む
2〜3日で赤みとヒリヒリ感もおさまり、傷跡は残らないで治る
組織: 熱傷の進達度は表皮内までの浅い層のみ
治療: 受傷直後に汚染物などは流水にて洗い流し、冷却。
できれば患部に抗炎症剤の軟膏やオイルを塗る。
 
● 2度熱傷
原因: 熱湯・油はね・アイロン・高温蒸気など
症状: 2度熱傷−1(SDB=superficial dermal burn)
   皮膚が赤くなり、痛みを伴う。水泡形成を認める。
   2週間程度で治り、傷跡は残らない。
2度熱傷−2(DDB=deep dermal burn)
   皮膚が蒼白くなり、鈍い痛みを感じる。
   水泡形成を認める。
   2〜4週間程度で治るが、傷跡が残る場合が多い。
組織: 2度熱傷−1(SDB)
   熱傷の進達度は表皮〜真皮上層までの比較的浅い層
2度熱傷−2(DDB)
   熱傷の進達度は表皮〜真皮下層までの比較的深い層
治療: 2度熱傷−1(SDB)
   受傷直後に汚染物などを流水で洗い流し、2〜3日間は冷却。
   患部に抗炎症剤の軟膏やオイルを塗り、傷口を保護。
   患部はできれば挙上位とし、汚染を予防し安静に。
   治るまで傷の消毒が必要。
2度熱傷−2(DDB=)
   受傷直後に汚染物などを流水で洗い流し、2〜3日間は冷却。
   患部に抗炎症剤の軟膏やオイルを塗り、傷口を保護 
   患部はできれば挙上位とし、汚染を予防し安静に。
   治るまで傷の消毒が必要。
   縫縮術や植皮、皮弁術を必要とすることがある。

※ 治療中に、患部の初期の冷却が行われなかったり、安静が保てなかったり、汚染や感染が生じたりすると、SDB→DDB・DBへ状態が悪化し、傷跡を残すことがある。
※ 水泡はむやみにつぶしたり、破いたりしない。
  あまり大きい場合は穿刺することもある。
 
● 3度熱傷=(DB=deep burn)
原因: 高温金属・高温蒸気・火災・爆発
症状: 皮膚は茶褐色〜灰白色、白色、黒色。羊革〜炭様
感覚が鈍く、痛みをあまり感じない。
毛をひっぱると抵抗無く抜け、痛みも感じない。
針で刺しても痛みを感じず、出血も乏しいか認めない。
自然治癒することはまれで、手術を要するが、治るまで数ヶ月を要し、傷跡が残る。
組織: 熱傷の進達度は表皮〜皮下組織(脂肪・筋肉)までの深い層
治療: 受傷直後に汚染物などを流水で洗い流し、2〜3日間は冷却。
患部に抗炎症剤の軟膏やオイルを塗り、傷口を保護 
患部はできれば挙上位とし、汚染を予防し安静に。
治るまで数ヶ月間の傷の消毒が必要となる。
壊死組織や感染部などの汚染創を切除して、 縫縮術や植皮、皮弁術を必要とすることが多い。

※ DBでは赤血球や筋肉も障害を受けて組織破壊が生じるので、貧血や腎臓の機能低下などを併発し、より重症化しやすい。
(4) 自分でできる応急処置

 ○ 簡単に脱げる衣服や外せる装飾品を除去する。
 ○ ストッキングやズボン、靴下など患部に張り付いた状態の物は、無理に脱がずに、
   きたまま流水にさらして冷却する。
 ○ 流水で10分間以上洗浄冷却。
 ○ 川や井戸水、用水路にはつけない。
 ○ 氷嚢や冷却タオルなどで20〜30分間冷却する。
 ○ 水泡はつぶしたり、破ったりしない。
 ○ むやみに市販薬を塗ったり、民間療法を試行せず、清潔なタオルなどで傷口を覆って保護したまま冷却。
 ○ 冷却は3日間行うのが理想。
 ○ できるだけ早期に医者に診せる。

(5) 熱傷の後遺症とその治療
感  染: 傷が深くなる原因の一つ→感染をおさめる治療が優先。
創が真皮下層を超えたり、傷跡が残る場合は、手術(瘢痕切除・縫縮〜皮弁、植皮術)が必要。
色素沈着: やけど跡や植皮部に茶褐色のシミがついて残る
ビタミン剤の塗布や内服、ハイドロキノンなどの塗り薬で3〜6ヶ月くらいかかって薄くなっていく。
肥厚性瘢痕・ケロイド
(=傷跡の盛り上がり):
トラニラストの内服やステロイド剤の局所注射で、3〜6ヶ月くらいで柔らかく平らになっていくが、傷は消えない。
少量の放射線を1〜2週間、連日〜隔日で当てる治療もあるが傷は消えない。
手術にて切除〜皮弁術行う場合もある。傷跡は残る。
ケロイドでは、再発する場合がある。
拘  縮
(=ひきつれ):
特に眼瞼や口唇、関節、手足の指など
矯正装具・リハビリ
手術(植皮〜皮弁術)
採皮部の傷跡 植皮に必要な皮膚を採取した場所にも傷跡が残る。



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